マイナ保険証に続く「処方箋まわりのDX」として、電子処方箋が少しずつ広がっています。2023年1月に運用が始まり、処方から調剤までの情報を電子的に管理できる仕組みです。患者にとっても薬局にとっても便利になる一方で、クリニックの経営目線で見ると、見落とされがちな「落とし穴」があります。
電子処方箋とは
電子処方箋は、これまで紙でやり取りしていた処方箋を電子化し、「電子処方箋管理サービス」で処方・調剤の情報を一元的に管理する仕組みです。マイナ保険証(オンライン資格確認)と連携することで、複数の医療機関や薬局をまたいだ直近の処方内容まで参照できるようになります。
- 重複投薬や併用禁忌を、その場で自動的にチェックできる
- 過去の処方・調剤情報を参照でき、より安全な処方につながる
- 紙の処方箋の発行・保管・受け渡しといった手間が減る
医療安全と利便性という意味では、患者にとって望ましい方向であることは間違いありません。
経営者の視点 ―「便利」の裏で再診が減る
あわせて注目したいのが、電子化と同じ流れで進む「長期処方」と「リフィル処方箋」です。リフィル処方箋は2022年4月に導入され、症状が安定した患者であれば、1枚の処方箋で最大3回まで、医師の再診を挟まずに薬局で繰り返し調剤を受けられます。処方箋まわりが電子化・効率化されるほど、こうした継続処方の運用はスムーズになっていきます。
患者にとって「毎回は通わなくてよい」のは大きなメリットです。しかしクリニック側から見ると、これは再診の回数そのものが減ることを意味します。再診料や各種管理料、処方箋料といった収入は来院回数に積み上がるため、来院が減ればその分だけ、患者1名あたりの単価が静かに下がっていきます。
実際、ある支援先のクリニックでは、長期処方・リフィル処方の活用が進んだ結果、患者1名あたりおよそ200円の実質減収が見られました。1人あたりでは小さな額でも、月の延べ患者数を掛け合わせれば無視できない金額になります。「プラス改定」「患者の利便性向上」という言葉の裏で、現場では静かに減算が進んでいるのです。
では、経営者は何をすべきか
- 算定の取りこぼしを防ぐ:生活習慣病管理料や各種加算の要件を点検し、取れる点数を確実に取る。
- 「回数」依存からの脱却:来院回数に頼る収益構造を見直し、1回あたりの提供価値や、自由診療・予防領域での補完を設計する。
- 取れる加算は確実に:電子処方箋やオンライン資格確認に関わる体制整備の評価など、DX対応で得られる加算は漏れなく算定する。
- 来院に頼らない接点をつくる:再診が減る前提で、オンラインや情報発信による患者との関係づくりに先回りして投資する。
制度は今後も「患者の利便性」の方向へ進みます。減収を嘆くのではなく、単価の設計と患者接点の設計を先に動かしたクリニックが、結果的に生き残ります。目の前の改定を作業として追うのではなく、数字の裏側を読む――それが経営者の視点です。

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